医学部入試において二次試験でリスニングを課す大学は少ないですが、共通テストのリスニングの成績はほぼ全ての大学で利用されます。センター試験では50点だった配点が共通テストでは配点100点となるなど、共通テストにおいてリスニングの存在感は増したと言えるでしょう。今回は主に共通テスト対策を考え、リスニングの勉強方法を見ていきましょう。
英文の知識のストックを増やすことが第一歩
リスニングは、単語とその発音、文法、読解などが一通り習得され、暗唱できるような英文の知識のストックを多く持っていることが上達のための前提となります。何を言っているのかわからない状態でただ英文を聴き続けてもそれは単なる雑音でしかありません。英文を聴いて頭の中で文章を文字で再生できるくらいになるためには、英文に多く触れることが必要です。
「連音」を意識して聞こう
連音とは、ある文中に出てくる単語の発音が、それに続くあるいはその前にある単語の発音との関係から、その単語のみを読むときの発音と異なることを言います。例えば ”in your” という単語の並びは、カタカナで強引に表すならば「イン ユア」ではなく「イニュア」に近い発音となります。このような連音のことを意識しながら聴くことも、文意を正しく捉える上での手がかりとなります。
聴く→読む、の繰り返し。一朝一夕では身につかない
英語の中でもリスニング能力が最も身につけるのに時間と労力がかかるものであると思われます。単語や文法のような基礎はもちろん、英文のパターンも頭に入れなければならず、さらには相手の読み上げるスピードについていかなくてはならないためです。
しかし、リスニングが得意になるための勉強方法というのはいたってシンプルで、
①スクリプトをまず聴く
②スクリプトを読みながら聴く
③最後にもう一度スクリプトを聴く
という3ステップを、多くのリスニング問題に対して演習していくことです。詳しく見ていきましょう。
①スクリプトをまず聴く
まずは何も見ずにそのスクリプトを聴きます。慣れないうちはスクリプトを2,3回は聞いても構わず、かつ全て聞き取れなくても構いません。リスニング問題のスクリプトであるならば、問題もこの段階で解いてしまいましょう。
②スクリプトを読みながら聴く
次には答え合わせ段階として、スクリプトを読みながら聴いていきましょう。①でよく聴き取れなかった箇所をよく聴き、連音などに注意しつつ発音を把握しましょう。この時、シャドーイング(音声と同じスピードで読み上げること)をして、自分で発音してみることもおすすめです。
③最後にもう一度何も見ずに聴く
①で聴き取れなかった箇所を②で把握してから、最後にもう一度何も見ずに聴きます。全て聴き取ることができ、問題も全問正解できるようになっていたらクリアです。この段階でもシャドーイングをやってみることもおすすめです。
リスニングの上達方法は①〜③の繰り返ししかなく、近道はないといってもいいでしょう。一日5~10分でも構わないので、英文を耳に入れる習慣を作ることが大事です。
慣れてきたら、一回で聴き取り、問題を解く練習をしよう
共通テストのリスニングでは、多くの問題が英文を一回しか流さない問題でした。それゆえ、一発勝負での聴き取りが要求されます。慣れてきたのならば是非とも一回で聴き取って問題を解くトレーニングもすべきです。
ここで注意しなければならないのは、共通テストのリスニングは問題文を読む時間が与えられ、読んだ上でリスニングに臨むということです。ゆえに、リスニング力のみを上げるだけでは不十分で、問題文を素早く読む速読力も必要となります。とはいえリスニングを得意とするくらいの英語の力があれば速読力を上げるトレーニングをするというより、問題を開いたらすぐに読むという心構え、作戦の意識を持つだけで十分でしょう。
議論のリスニングでは、登場人物のスタンスを意識!
リスニング問題では、一人の人物が話し続ける講義のようなスクリプトもあれば、二人以上の人物が会話・議論をするような形式のスクリプトもあります。このうち議論を聴き取る問題に関しては、登場人物の立場を捉えることが大事です。例えば、ある事柄に関して、男性の登場人物は賛成し、女性の登場人物は反対している、などの立場の違いです。男女は声で判別できますから、このような立場を捉えることは、問題の選択肢の絞り込みに有用でしょう。
おすすめ教材
センター試験リスニング過去問
共通テストのリスニングの過去問は、2021年に行われた一回分しかありません。しかし、従来行われてきたセンター試験と共通するところは多くあるため、センター試験の過去問は共通テストのリスニングの演習教材として重宝します。長年行われてきたセンター試験なので問題のストックは多いため贅沢に活用しましょう。特に、聴き取りが始まる前の問題文の読解などの練習には最適です。ただし、センター試験のリスニングは全問において英文が二回繰り返して読まれるため、その部分は工夫をしなければなりません。おすすめなのは、全ての問題について英文を一回のみ聴いて問題を解くことです。荒修行ではありますが、必ず力となるでしょう。
大学入学共通テスト英語リスニングの点数が面白いほどとれる本(竹岡広信、KADOKAWA)
いわゆる「黄色本」です。著者の竹岡先生は「ドラゴンイングリッシュ」などの良著でも知られる駿台の敏腕英語講師でいらっしゃいます。その竹岡先生が、センター試験を徹底分析し、共通テストに活きるであろうエッセンスを抽出して作ったのが本書です。様々な問題を収録しているほか、共通テストの問題形式ごとの心構えやテクニックなども掲載しており、試験本番での実践的な内容となっています。
東大英語リスニング過去問
東大は一貫してリスニング問題を出題し続けています。さすが東大だけあり一筋縄では行かず、事前に問題文を読んで大まかなスクリプトの展開を予想したり、選択肢を比較したりするなどのテクニックが、リスニング力だけでなく要求されます。また東大のリスニングでは2~3人の登場人物が議論する形式の問題もあるため、共通テストで出題される複数人の議論の問題への対策となるでしょう。特に2021年に行われた初めての共通テストでは、4人の人物が会話に参加するという形式の問題が出題され波紋を呼びました。ゆえに、従来のセンター試験よりも複数人が話す形式の問題への対策は厳格に行わなければならないと予想されます。それゆえ東大のリスニング問題は東大や他のリスニングを課す医学部を目指す人はもちろん、共通テストのリスニングで満点を目指すくらいに成長したい人にもおすすめされます。共通テスト対策には若干オーバーワークに思えるかもしれませんが、センター試験よりは難しくなったと思われる共通テストのリスニングで高得点を出すためには触れておいても良い教材でしょう。
このほか、YouTubeなどの動画サイトで英語を聴くことも良い勉強方法の一つです。テクニックの習得や問題演習の前に、とにかく多くの英文を聴き、「英語耳」を作ることが大事です。